2019
08.15

【欧州ファッション】Rituals、セオリー、ヨーコチャンに見られる”Affordable luxury”のトレンド

トレンド, ブランド研究

移り変わりの激しいファッション業界ですが、ヨーロッパにおいても次々と人気ブランドが現れては消えていきます。

ユニクロやZaraなどのファストファッションや、ルイ・ヴィトンやグッチのようにハイブランドは依然として人気があるものの、そのどちらにも属さないブランドカテゴリーも頭角を表しています。

街を歩くと、まだ聞いたことのない2−5万円代の価格帯の、ちょっと大人っぽくて質が良さそうなブティックが増え、新しい時代の波が出てきているのも垣間見れます。

日本でも、ヨーコチャン(YOKO CHAN)という5万円台で上質のブランドがじわじわと人気を出しています。

今回は、そんなハイブランドにもファストファッションにもどちらのグループにも属さない”Affordable luxury”(アフォーダブルラグジュアリー)のトレンドについてご紹介したいと思います。

Affordable luxuryとは?

Affordable luxuryとは、「Affordable=手に届く」と「luxury=ラグジュアリー」の組み合わせで、つまり「手に届くラグジュアリー」と言われます。カテゴリーとしては、ハイブランドほど価格も高くないけれど、ファストファッションほど安価でもない価格帯にあり、それでいて上質なものを提供している中間層ブランドのことです。

中間層とはいえ、「まあまあ」というレベルではなく、「安くても高く見える」「割安でも質がいい」というポジティブサプライズがあるようなポジショニングで、「そこまで高くないのに高価に見えてさらに上質」というメリットがあります。

どんなブランドがある?

Zaraやユニクロよりも少し高めのブランドで、例えばヨーロッパの街を歩いていてよく目につくブランドは、COS, maje, Sandro, IRO, Massimo Dutti, J.Crew, Theoryといった1万円代前後の価格帯のファッションブランドがとても多くあります。低価格で大量生産をしているものではないので、ブティックに入ると1点もののデザインとして並べられているものも多くあります。

また、ライフスタイルブティックの部門では、&other storiesなどのように5000円〜1万円前後から始まるファッション、コスメ、バッグ、香水、雑貨などを扱うライフスタイルショップがとても人気です。

コスメ部門では、オランダ発のRitualsやNuxe、Weledaなど、シャネルやディオールほどの高価格帯ではないけれどプチプラではなく、高級感を保ったポジショニンクをしているブランドが挙げられます。

Affordable luxuryが人気の背景

ラグジュアリーとファストファッション疲れ

Affordable luxury(アフォーダブルラグジュアリー)が人気の背景には、ハイブランドに対する執着心の無さとファストファッション疲れが挙げられます。巷のヨーロッパ人に話を聞いても、ジュエリーや時計とは違い洋服は数年しか持たず、また飽きも来てしまうため、高いお金を払って買う気が起きないとのこと。ハイブランドなどで1枚数万円もするブラウスを買うのはあまり現実的ではないということでしょう。

一方で、ハイブランドのデザインをうまく取り込んだZaraや機能性が高いユニクロも値段的にありがたく利用はするものの、やはり年齢を重ねるに従って「上質なもの」へのこだわりがむくむくと心の中に出てくる。

そんな思いの狭間でたどり着いたのがAffordable luxury(アフォーダブルラグジュアリー)。

「高いお金を払いたくないけれど上質なものを手に入れたい」という消費者のワガママな願いを聞いてくれたブランドカテゴリーです。

ものを大事という昨今の風潮とマッチ

また昨今のトレンドは『エコ』であるということ。安く買った服をすぐ捨ててしまうのは、お金の問題ではなく環境に良くない、という思いが強く出てきています。

ものをたくさん身の回りに抱えて、ごちゃごちゃした中で毎日選びきれないほどの物に囲まれて生活する楽しさよりも、こんまりさんに代表されるように「片付け」や「断捨離」が人生の質を上げる取捨選択として見直され、シンプルでミニマルな生活を送ることが心地の良いことだという風潮があります。

なるべくであれば、「気に入った上質のものを長く大切に着ていきたい」という思いが、Affordable luxury(アフォーダブルラグジュアリー)への人気を高めています。

まとめ

トレンドの波に乗って変化を遂げていくファッション業界ですが、富の象徴でもあるハイブランドへの執着心が消え、ファストファッション疲れを起こしているところに出てきたAffordable luxury(アフォーダブルラグジュアリー)。

今まで数年かけて、「こんなのがあったらいいな」というぼんやりとしたニーズが徐々に形になってきたブランドカテゴリーですが、とても良いポジショニングを保っていることは間違いありません。

ただ、Affordable luxury(アフォーダブルラグジュアリー)のカテゴリーも徐々に飽和状態になってきているため、競争が激しくなってきました。

しばらくこの波は続きそうですが、今後の展開もまた目が離せそうにありません。

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